ホシゴイ 夜ガラスの子
早朝の多摩川で、雲間に東の空の朝焼けを見ながら鳥見をして、大栗川の土手沿いに上流へと歩くと、川にかかる橋の先、水の流れの真ん中にあるコンクリートの塊の上に水鳥のシルエットが見える。
川面を見つめるホシゴイ
ホシゴイである。7月にもう少し下流でみた個体と同じだろうかと思いながら見てみると、あの時より少し成長しているように見えるので、たぶん同じ個体がここを生息地にしているらしい。
幼鳥がいるなら親のゴイサギもいるだろうと淡い期待を持ちながら、早朝の河原を歩く時、目をみはって水草の中や樹木の枝の中などに注意しているのであるが、なかなか期待通りにはいかないものである。
魚をとるホシゴイ
ゴイサギは、頭上と背中が紺色で顔と首体下面は白いので、緑の木々の葉の陰にいても比較的わかりやすいが、ホシゴイは全体が褐色で背面が星模様になっているので擬態色のように見える。
名前の由来は古い、ゴイサギは漢字で書くと「五位鷺」と書く。それをたどると、「平家物語」までさかのぼる。故事ではいろいろな説があるが、要は醍醐天皇に五位(貴族の階級のひとつ)を与えられたから「五位鷺」なのである。
ホシゴイはその幼鳥で背面が星模様をしているので「星五位」といわれている。魚の世界での出世魚で名前が変わるのはよく聞くが、野鳥で幼鳥時代に固有名詞を持っているのは珍しいのではないかと思う。
飛翔するホシゴイ
さすが、天皇に階級をもらった親鳥を持つ子供は特別扱いなのだろう。世が世ならば、土手の上から見下ろしてレンズを構えたりすることは、厳罰ものかもしれないと思うと、平成の世の中に感謝するところである。
獲物を狙うホシゴイ
醍醐天皇の勅命に素直に従い捕らえられて、「五位」を授けられたため「ゴイ」のつくサギ仲間の元祖となっているが、夜騒がしく鳴くこととその鳴き方がカラスに似ていることから夜ガラスとも言われている。この個体が無事にこの河原で「ゴイサギ」に成長した姿を見ることを楽しみにしたいものである。
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