雨模様の朝が嘘のように晴れ上がり、良い天気になった。遠出も出そびれたので久々に映画を観に行くことにした。最近の映画のシステムはよくできている。シニア世代は二人で行くと、一人1800円のところが二人で2000円で観賞できる。シアターもゆったりして楽に座れる。
最近の話題作、木村大作監督の「剣岳 点の記」を観ることにした。木村大作はカメラマンで若いころから知っていたので特に興味があった。実は、今は亡き義兄は東宝のカメラマンで木村大作とは同期であった。今も大事に保管している当時のアルバムには、石原裕次郎、星由里子などの俳優とのショットが残っている。
私のカメラ好きも少し影響されているところがある。子供の写真などは、やはり撮り方、アングルなどが素人とはちょっと違うところがあり参考にしたものだ。遺品としてキャノンのフィルムカメラを今でも大事に残してある。つい最近までは娘がフィルムカメラを愛用していたので、現役として使っていたが、このところデジカメに替えてからは、カメラ保管庫の中にペンタックスとともに眠っている。娘とはレンズが共用できるので、最近はニコンで統一している。
剣岳のあらすじ・・・・・誰かが行かねば、道はできない。 日本地図完成のために命を賭けた男たちの記録である。
『日露戦争後の明治39年、陸軍は国防のため日本地図の完成を急いでいた。陸軍参謀本部陸地測量部の測量手、柴崎芳太郎は最後の空白地点を埋めるため「陸軍の威信にかけて、剱岳の初登頂と測量を果たせ」という命令を受ける。立山連峰に屹立する釼岳は、その険しさを前にして、多くの優秀な測量部員をもってしても、未踏峰のままであった。
創設間もない日本山岳会も、海外から取り寄せた最新の登山道具を装備し登頂を計画しており、「山岳会には負けてはならぬ」という厳命も受ける。
前任の測量手・古田盛作を訪ねた柴崎は、あらためて釼岳の恐ろしさを知るが、アドバイスとともに案内人として宇治長次郎を紹介される。新妻・葉津よの励ましを受けて富山に向かった柴崎は、宇治と合流、調査の為に山に入ったが、謎めいた行者の言葉
「雪を背負って降りよ」 以外、登頂への手掛かりすらつかめずに帰京する。
そして翌明治40年(1907)、測量本番の登山へ。柴崎・宇治に、測夫の生田信らを加えた総勢7人で、池の平山・雄山・奥大日岳・釼御前・別山など周辺の山々の頂に三角点を設置し、いよいよ剣岳に挑む。
しかし、剣岳山頂までの道のりは、想像を絶していた。ガレキだらけの切り立った尾根、雪崩や暴風雨など困難に続く困難が測量隊の行く手を阻む。頂上までの登頂路すら、見つけられず、そそり立つ頂を仰ぎ見るばかりの日々。
重さ100キロ超の三角点用の石柱と測量器具を担ぎ、粗末な装備で挑むにはあまりに絶望的な状況。宇治の卓越した山に対する勘をも疑うなど、柴崎は焦り始めていた。はやる生田は南壁を登ろうとするが、足を滑らせ転落する。軽い怪我ですんだものの打ちひしがれる7人。自分達は本当に剣岳を登りきることができるのか、命を危険にさらしてまで釼岳を測量する意味はあるのか、という迷いが柴崎の胸中をよぎる。
一方、日本山岳会・小島鳥水らも釼岳に挑んでいたが、測量隊同様、容易には進めない状況であった。ただ、山の尾根でひたすら三角点作りに邁進する柴崎たちを見て小島は自分達とは違う仕事に対する考え方を思い知る。
「我々は登るのが目的だが、あなた方は登ってから仕事だ」
立山温泉で治療を行っていた生田は測量隊に再び合流する。各人の手紙を持ち帰りそれぞれが大切な人に思いを馳せる。柴崎には古田からの手紙が来ていた。
「人がどう評価しようとも、何をしたかではなく、何のためにそれをしたかが大事です。悔いなくやり遂げることが大切だと思います」
今一度、皆に仲間としての結束を訴える柴崎。そびえる頂を見て何度目かの挑戦をする。柴崎と宇治は、行者の言葉にヒントを見出す。
一歩ずつ進む柴崎たちは、無事に頂上に達し、地図作りの任務を終えられるのか・・・・・。』
剱岳登頂は成功するが、そこには行者の登頂の証があった。よって初登頂ではなく軍のトップは柴崎の成功をみとめなかった。しかし、柴崎は日本地図の最後の空白地点を測量し地図を完成させたのである。自然との闘いの中で人間愛、人情の機微を感じることができる。
新田次郎原作だけあって山の描写は鋭く細かい。学生時代は山岳小説をむさぼり読んだものだ。この映画は二年間延べ200日の年月をかけたと聞く。男の仕事の厳しさとロマン、自然の厳しさに命がけで闘う姿がすばらしい、役所広司演ずる古田の言葉 「何をしたかでなく、何のためにしたかが大事です」という言葉が心に残る。
また、、宇治長次郎役の香川照之の息子に対する教え、それがわかって父親に手紙を書く息子の姿が涙を誘う。子どもは親の背中をみて育つのだとつくづく思う。最近は涙腺が緩むことが多く、周りにわからないように涙をぬぐう。
また、新妻、葉津よを演じる宮崎あおいのひたすら夫を信じて尽くす日本女性の姿、今ではなかなか見つからない女性像である。本当に感動を与えられるいい映画であった。
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